風景は常に私たちを取り巻いているように見えます。しかし実際の風景は眼に映るものだけでなく、人間の五感、時間や記憶、気配や想像力の総体として感知されています。また「景」という言葉は、人間と、人間を取り囲むさまざまな事物との関係という意味を持ち、見る者のまなざしが事情や現象を選び取ったり、視線を再び投げ返すことによって、はじめて風景が成り立つことを示しています。風景の構造は常に生きて変化しているのです。
今回紹介する3人の作家はいずれも、自分自身と外部の世界が接し、主客が溶け合う感覚を「風景」ととらえ、制作のテーマにしています。それぞれの視線の向きは異なりますが、自らの身体から生ずる感覚を尺度にして光や空間との距離を測り、それらと呼応しながら風景を再構成しています。また、絵の具を塗る、光を受けとめる、未知の場所へ旅する、という彼らの行為から引き起こされる感情も、その作品に存在感を与える大きなよりどころになっています。それは作家のセルフ・ポートレートとしての一面をあわせ持っているとも言えましょう。
目まぐるしく変貌し続ける現代において、風景を創造する力は人間の領分のひとつであることを再確認し、私たち自身も常に新しい風景の成立に関わりうるという豊かな可能性を見いだすため、3人の視線を通して身体、感情、表現の関係から生まれる風景のあり方を探っていきます。
会期
1999.6.22 [火] - 8.8 [日]
観覧料
一般570円(470円)、大高生470円(360円)
※( )内は20名以上の団体料金。
※中学生以下と65歳以上、障害者手帳をお持ちの方(付き添い1名を含む)はいずれも無料です。展覧会入場時に確認いたしますので
主催
埼玉県立近代美術館
後援
財団法人地域創造(ジャンボ宝くじ助成事業)
協力
日本精蝋株式会社、アジアカラー株式会社